ありとキリギリス、あるいはセミについての調べ物リンク集

東京都立中央図書館レファレンスデータベース

(2)日本ではいつ頃からキリギリスを助けてあげる話・絵本が出てきたのか。
CiNii Articlesを<イソップ><蟻>等のキーワードで検索したところ、以下の論文があった。当館では所蔵していないが、インターネットで本文が閲覧できる。

『仁愛大学研究紀要.人間学部篇』No.4 仁愛大学 2013年3月 p.78-86
「「イソップ寓話」翻訳・翻案の特異性:「蟻と蝉の事」の事例検証から」谷出千代子著
( http://ci.nii.ac.jp/naid/110009575039  最終確認日:2017年11月15日)
※ タイトルの「蝉」の表記は右上の部分が「ツ」ではなく「口」が横に二つ並ぶ。

上記の論文では、明治・大正期に発刊された複数の「アリとキリギリス」の原話の型となっている6種類を比較している。この型のうち、天草版伊曾保物語『イソポのハブラス』のみに「少しの食をとらせて蝉を戻した」という温情の描写があるという。
この『イソポのハブラス』は、天正遣欧使節団がポルトガルから持ち帰った活字印刷機によって1593(文禄2)年に印刷されて世に出たとある。(資料5 p.168-173)

また、資料5では、『イソポのハブラス』について、「温情の施しは原典にあるはずのないもの」「温情あるはからいをしたのは、どうやら『ハブラス』の蟻だけである。」と説明している。さらに、「原作に対するこうした温情主義的改変とでも呼ぶべき加筆が、現代日本の幼児向けの絵本類ではかなり高い比率で生じていることも注意を惹く。」との記述がある。(資料5 p.190-202)
なお、『イソポのハブラス』は、資料6に収録されている。p.56に「蟻、(中略)散々に嘲り、少しの食を取らせて、戻いた」という記述がある。

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